般若心経-陀羅尼の音の違い

上記の動画はオリジナルのサンスクリット語の『般若心経』です。
個人的に私が一番好きなサンスクリット語の Haret Sutra(般若心境) です。
なぜならば、サンスクリット語の般若心境のマントラをググれば色々拾える現代ですが、
その大体が、楽器のメロディーが挿入されており、マントラの節回しに関しても歌になってしまっているという
非常に残念なものしか拾うことができないのです。
しかしながら、このバージョンはその様な歌っぽい節回しではなく、節回しはガチのお経であり、その点が非常に神聖であり素晴らしいのです。
ぜひ聴かれてみてください。
そして、以下にもう一つ、サンスクリット語の『般若心経』の動画を載せておきます。
こちらの動画は、アルファベットでサンスクリット語を表記してくれているので、唱えたい人の勉学用によろしいかと思います。
さて、動画 02:08 秒より、『ギャーテー ギャーテー』で始まる皆さん周知の『曲のサビ・陀羅尼』の句が始まります。
しかし、私達が日本の寺でよく耳にする陀羅尼とは全く異なる音に皆様も、さぞ驚かされたことでしょう。
そこで今日は、般若心境のオリジナルテキストであるサンスクリット語の音と、日本の般若心境で発せられている音が、なぜこうまでちがうのか?
今までフォーカスされることのなかった、その点について歴史的な史実に基づき、深掘り考察して紐解いていこうと思います。
まずは、サンスクリットと日本の般若心境の陀羅尼の違いを以下より、テキストにて掲示いたしますので、比較してご覧くださいませ。
✳︎ サンスクリットの陀羅尼
ガテー ガテー パーラガテー パーラサムガテー ボーディ スヴァハ
gate gate paragate parasamgate bodhi svaha
✳︎ 日本の陀羅尼
ぎゃーてー ぎゃーてー はら ぎゃーてー はらそーぎゃーてーぼーじーそわか
羯諦羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆訶
✳︎ 陀羅尼(ダラニ)とは、「記憶して忘れない」という意味を持つ呪文です。陀羅尼を暗記して繰り返し唱えることで雑念を払い、無念無想の境地に至ることを目的としています。今日でも寺などの精神修行の場で持ち入れられています。
こちらの般若心境は真言宗の日本語ヴァージョンです。
動画 02:13 秒より『陀羅尼』の句が始まります。
そうです。こちらが皆さんの慣れ親しんでいる陀羅尼ですね。
お聴きいただいたとうり、日本とサンスクリットのそれは全く違う音となっています。
実は、日本語の般若心経で発せられている陀羅尼の音が異なる理由は、歴史的な背景にあります。
続いては、般若心境にまつわる歴史的考察から、どの様にして音の違いが生まれたか?
ということを紐解いていきましょう。
南インドで産まれた般若心境
般若心境の出目に関しては、未だ謎が多く、原文はサンスクリット語で書かれ、南インドで2世紀頃に書かれたと言われています。
このように般若心境は南インド発祥となりますが、その後、ある一人の中国僧により、般若心境は中国に持ち込まれることになります。
三蔵法師により中国に持ち込まれた般若心境
時は6世紀、中国が唐の時代、西遊記・三蔵法師の名で良く知られる・玄奘三蔵は、南インドに陸路で渡ります。ナーランダ仏大学で17年間の修行に励み、そこで出会った般若心境を中国に持ち帰ります。そして、持ち帰ったサンスクリット語の般若心経に漢字を当て嵌め、当時の中国語に翻訳し、発音や節回しを完全に変えてしまいました。
玄奘は般若心経をサンスクリットから漢訳する際、『音写』したとされていますが、(発音されている音をそのままに漢字に嵌め込んだとされています)しかしながら、二つの国の言語は、音的に無い発音も多々あるため(音韻体系が異なるため)当然ながらそれは不可能な事で、結果、多少似てはいるが全く違う音として発音されています。
そのことを私なりにわかりやすく噛み砕いて解説してみましょう。
例えば、英語の F や R、または L の発音は日本語には無い音です。音的に英語の V の音は日本語の ブイ の音ではない様に、二カ国語間での正確な音写はできないのです。
What time is it now? ➡︎ 掘った芋いじくるな。
上記の音写の様に、元来、二カ国語間の音写というものは。このくらいの失笑レベルでしかあり得ないものなのです。
それらを踏まえて考察すると、玄奘の訳はどちらかというと…
音写して『正しい発音』を重視した訳。
というよりは、漢字の持つ特性上、 漢字の字面を観ただけで、なんとなく経や呪文(陀羅尼)の持つ意味が推測できるという
『意味の理解し易い訳』と言えるのではないでしょうか。
空海により日本に持ち込まれた般若心境
さて、その後の8世紀、遣唐使として唐を訪れた日本の仏密の祖・弘法大師空海により、般若心経は日本へと持ち込まれました。
南インドから中国経由で中国フィルターを通し日本に輸入された般若心経は、動画のようにオリジナルのサンスクリット語の般若心経の発音や節回しとは、似ても似つかぬ別の物になっているのです。
空海は般若心経の注訳書として『般若心経秘鍵』を著しており、その中で『般若心経とは、般若心経の大心真言(陀羅尼)による内証三昧を説いた経典』である。と見解を述べています。
即ち、【般若心境とは、陀羅尼(呪文)の部位がお経のメインであり、その陀羅尼を一心に Japa(繰り返し唱える音瞑想 / マントラヨガ)することで、トランス状態(瞑想状態)へと没入し、三昧( Smadhi / 悟り / Oneness )を得られる】と述べているのです。
恐らく空海は、陀羅尼を用いた音瞑想での内証三昧の獲得という、自身の実体験を基に、このような見知に辿り着いたのでしょう。
そして、彼の説で更に重要な特質点は、【陀羅尼は音写された正しい発音で唱えられてこそ、その功徳(三昧、悟り)は得られる】という見解です。
その見解は空海の開いた真言宗の中核の教義となり、今尚、現代に於いても厳守され続けてきています。
あ、、空海さん。やっちゃいましたね。
『違う音で陀羅尼を唱えても、その効力は全く無い。意味がない。』
空海はこの様に説いたのです。
当時、空海が唱えていた般若心境の音は、オリジナルのサンスクリットのそれとは全く違う音であったのにも関わらず…
さて、もし、空海がオリジナル(正しい発音)のサンスクリット語の般若心経を聴く機会が有ったとしたら、一体どの様に教義をアップデートし直したであろう?
と、そう考えてみるのも面白いものです。
とはいえ… 音が違えば、お経の功徳(効能)は無いのでしょうか?
私はこう考えます。
伝来より千年の時を経て、ここ日本に於いて般若心経がこの様に世に広く親しまれ普及している所を観ると、『功徳は有る』と言うこともできるのではないかと感じるのです。
そして、日本の般若心境もまた、心地の良い独自の響きを持つものですよね。
という事で…
後期仏密/タントリックブディズムを母体とし、8世紀に北インドで発祥した『ハタヨガ』の創始者・ナータ派のマッエンドラや、その後のゴラクシャ達も、この動画のようにサンスクリット語で般若心経を唱えていたか…
と思いを馳せれば我が胸も熱くなるのです。
私自身もオリジナルサンスクリットの陀羅尼を日々唱えております。
そして今日も、日本中の至るといころで、般若心境を一心に唱える人々の声はこだまするのです。
Nada Brahma (音は神なり)
坂東イッキ
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ヴァイクンタヨガ沖縄について
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